[2013年4月改組]
2013年4月をもって新たな組織に発展し、研究を展開しています。 > ライフサイエンス技術研究基盤センター
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FANTOM

FANTOMは、理化学研究所のマウスエンサイクロペディアプロジェクトで収集された完全長cDNAのアノテーション(機能注釈)を行うことを目的として、2000年に結成された国際研究コンソーシアムです。2008年12月現在、参加国数15カ国、参加機関は国内外合わせて51機関に上ります。

FANTOMの歴史

FANTOMはこれまでに、4つのフェーズの活動を行ってきました。アノテーションパイプラインの確立に始まったFANTOMの活動は、急速に発展・拡大し、トランスクリプトーム解析を経て、2009年には転写因子のネットワークを解明するに至りました。現在は、FANTOM5プロジェクトが始まっています。

FANTOM


FANTOM1
遺伝子の機能注釈のルールや方法について取り決めを行い、遺伝子の機能注釈を効率的に行なうシステムを開発しました。研究成果は 2001 年のNature 誌に発表されました。(Kawai et al. 2001) 1週間後に発表された国際ヒトゲノム計画の論文 (Lander et al. 2001) では、OSCの論文を引用し、完全長cDNAデータを使って遺伝子数の予測をしています。
FANTOM2
60,770セットのマウス完全長cDNAの塩基配列および機能注釈を行いました。この活動は、世界で初めて哺乳類の完全長cDNAの標準化を行ったものです。論文は、マウスゲノム解読の報告とともに、Nature特集号に掲載されました。
FANTOM3
完全長cDNAに加えて、新たに開発したCAGEなどの技術を活用した解析を行い、従来2%といわれていたゲノムが実際には70%以上がRNAとして転写されていることを示しました。さらに、従来は100個程度しか知られていなかったncRNA (non-coding RNA)が実は2万3000個以上も存在することを突き止めました。これは、「RNA新大陸」の発見として教科書を書き換える発見でした。この研究成果はScience 誌のRNA特集号に掲載されました。(Carninci et al. 2005; Katayama et al. 2005)
FANTOM4
FANTOM4では、転写因子のネットワークを解明するための方法を開発し、ヒト白血病由来細胞株が単芽球から単球の状態に分化する過程をモデルとして、実験データのみに基づく転写因子のネットワークを明らかにしました。この方法を応用することにより、さまざまな細胞の分化状態(表現形質)を支配している一群の重要な遺伝子を抽出することができ、将来的には、細胞を自在に変換する技術につながると期待されます。

FANTOMがつくった世界標準

FANTOMデータベースと完全長cDNAクローンバンクは、ライフサイエンス研究の世界標準となっています。FANTOMが整備したこれらの研究リソースは、年月が経過しても古くなることがなく、研究者の役に立つものです。また、それだけには留まらず、新たな創薬分野の研究にも応用されています。

FANTOM データベース
FANTOMデータベースは、マウスの様々な組織、発生過程に由来する237種以上の完全長cDNAライブラリーについて、全長の塩基配列と、その機能注釈をつけて一般に公開しているものです。 http://fantom.gsc.riken.jp/
FANTOM3 データベースには6ヶ月間で 2,600,674 件のアクセスを記録しており、およそ5秒に1回のペースで閲覧されていることになります。
完全長cDNA クローンバンク
完全長cDNAは、株式会社ダナフォームなどから入手することができます。これまでに960以上の研究グループに、完全長cDNAクローンを頒布しました。
FANTOM 技術応用
理化学研究所で開発された一連の完全長cDNA技術と、FANTOMで確立されたcDNAアノテーションシステムは、我が国における主食であるイネ(Kikuchi et al. 2003)、実験用植物であるシロイヌナズナ(Seki et al. 2002b; Yamada et al. 2003)、ショウジョウバエ(Stapleton et al. 2002)、アフリカツメガエル、ソングバード(Wada et al. 2006)、社会性をもつ昆虫として知られるミツバチ(InternationalHoneybeeConsortium 2006)およびヒト(Imanishi et al. 2004)など、様々な生物の完全長cDNA解析に応用されました。

FANTOMの成果を活用した研究の例

FANTOMデータベースとcDNAクローンバンクは、ヒトやマウスをはじめとする様々な生物についての基礎研究および医療・創薬などの応用研究のためのプラットフォームとなっています。

iPS細胞
京都大学の山中伸弥教授らは、ES細胞に含まれる初期化因子は、ES細胞の万能性や高い増殖能を維持する因子と同一であるという仮説のもと、FANTOMクローンデータベースなどから、初期化因子の候補として24因子を選定しました。そして、この24因子の中の特定の4因子を組み合わせると、マウスの成体皮膚や胎児に由来する線維芽細胞、さらにはヒトの皮膚から、万能幹細胞が誘導されることを示しました。
Allen Brain Atlas
米国Allen Institute for Brain Scienceが開発した、マウス脳遺伝子発現マップは、FANTOMデータベースを使って作られました。今後ますます多様化していく、脳組織や脳機能の研究において、有益な情報源になることでしょう。
植物科学への応用
理化学研究所 植物科学研究センターは、OSCと連携してcDNAのマイクロアレイ解析を行い、干ばつ、低温、高塩分状態などのストレス状態で働く転写因子を特定しました。このデータは、ストレスに強い農作物への改良に役立っています。(Maruyama et al. 2004; Seki et al. 2002a)

FANTOMの社会的側面

FANTOMデータは、分子生物学だけに留まらず、医学、薬学、生物情報学(バイオインフォーマティックス)、数学、工学および高エネルギー物理学分野でも頻繁に利用されています。こうした異なる分野を包括する汎用性は、コンソーシアムに所属するメンバーに対しても良い影響を与えています。若手研究者にとっては、多様な研究分野の優れた科学者と意見交換ができる貴重な機会となっています。